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いまさら聞けない会計実務シリーズ【関連当事者に関する開示】

最終更新: 7時間前

関連当事者に関する開示については、

①会計処理ではなく財務諸表上の注記のみに関係する

②複雑なステップや計算方法があるわけではなく、会計の高度な専門知識が必要というわけではない。

という特徴があります。

しかし、網羅的に関連当事者の把握及び関連当事者取引の集計、重要性の判断をしっかり行っていないケースも散見されるトピックです。

今回は、

1.基本的な解説(いわゆる入門書に記載される各会計基準の基本的な内容)

2.手続きの流れ(いつのタイミングで何を準備し、どういった検討を行うのか)

3.それぞれの手続の解説

4.関連当事者に関する開示

という順番で説明して参ります。

1.基本的な解説

1-1.関連当事者の定義

関連当事者とは、「ある当事者が他の当事者を支配しているか、または、他の当事者の財務上および業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等」をいい、具体的には

  1. 親会社

  2. 子会社

  3. 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社

  4. 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びにその親会社及び子会社

  5. 関連会社及び当該関連会社の子会社

  6. 財務諸表作成会社の主要株主及びその近親者

  7. 財務諸表作成会社の役員及びその近親者

  8. 親会社の役員及びその近親者

  9. 重要な子会社の役員及びその近親者

  10. 6~9に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社

  11. 従業員のための企業年金(企業年金と会社との間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る。)

が該当します(会計基準第 11 号 関連当事者の開示に関する会計基準(以下、関連当事者会計基準)5項)。

1-2.関連当事者の会計上の取扱い

関連当事者については、「会社と関連当事者との取引のうち、重要な取引を開示対象」として財務諸表に注記することになります(関連当事者会計基準9項)。

注記内容は下記のとおりです(同基準10項)。

  1. 関連当事者の概要

  2. 会社と関連当事者との関係

  3. 取引の内容。なお、形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載する。

  4. 取引の種類ごとの取引金額

  5. 取引条件及び取引条件の決定方針

  6. 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高

  7. 取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容

  8. 関連当事者に対する貸倒懸念債権及び破産更生債権等に係る情報(貸倒引当金繰入額、貸倒損失等)

2.手続きの流れ

次に、手続きの流れを、いつのタイミングで何を準備し、どういった検討を行うのかについて説明してまいります。

関連当事者取引実務は下記の3ステップで行っていきます。

(1) 定義にあてはめて関連当事者を分類整理しながら把握する

(2) 各関連当事者との取引を把握する

(3) 当該関連当事者取引が注記すべき重要性を有しているかどうかの判定を行う

上記は法人グループと個人グループのそれぞれに区分して手続きを行っていくことになります。

関連当事者に関する注記は四半期報告書では要請されていないため、期末決算のみ対応することとなります。

内部統制としては、関連当事者を期首時点及び変更が生じた時点で網羅的に把握し、関連当事者取引の内容を発生の都度検討するのが理想的と思料されます。 但し、費用対効果の観点から通常は期末決算に合わせて関連当事者及び関連当事者取引の把握が行われることになると想定されます。

関連当事者に関する手続の流れと準備すべき項目(資料)を記載すると下記のようになります。

表は、決算プロセスにおける記載時点で必要な対応の項目、資料を記載したものです。

期末決算のみの開示事項であるため、予算編成時や四半期決算時には作成すべき資料がないのが特徴です。

3.各ステップの具体的な検討内容

3-1.関連当事者の把握

①法人グループと個人グループ

全てのステップにおいて法人グループと個人グループのそれぞれに区分して資料を作成していくことになります。内容が大きく異なるのは「(1)関連当事者の把握」ステップです。

法人グループの関連当事者は、会社の管理部門(総務部署等)で出資や株主、役員の資料より抽出していくことになりますが、個人グループは大株主(個人)、役員の協力が必要になってきます。

②個人グループのアンケート

対象となるのは 「個人主要株主、財務諸表提出会社・親会社・重要な子会社の役員 」となります。いわば会社の重鎮に対する調査であるため、このステップが踏まれていない会社も多いと思います。関連当事者を網羅的に把握するという観点から総務役員や主要個人株主に対して決算開示上必要な調査であり、上場会社の責務であることを理解してもらい、協力を仰ぐ必要があります。

そのためにも記載内容が明瞭となる下表のような調査表を準備することになります。役員であれば、取締役会の会場にて事務連絡の形で予告させてもらい、その後メールする等の対応方法となると思われます。

(関連当事者調査表サンプル)

③関連当事者のとりまとめ

関連当事者会計基準上の定義に分類し、法人グループ、個人グループごとに関連当事者をとりまとめていきます。

個人クループについては、前回紹介した「②個人グループのアンケート」を回収し、一表にとりまとめ、その他開示に必要な情報を付加していきます。

次に法人グループについては、会社の管理部門(総務部署等)で出資や株主、役員の資料より抽出し、関係内容等を追加記載していくことになります。

3-2.各関連当事者との取引の把握

(1)で集計した関連当事者ごとに会計帳簿より取引を集計していきます。多くの場合、関連当事者は事前に把握しているはずなので、頻繁に取引が生じる相手先については補助コードを設定するなどの工夫が考えられます。

また、個人グループについてはアンケートの際に記載の関係者が開示会社及び子会社と取引があるかどうかも一緒に確認しておく手法も考えられます。

取引の内容・金額は前回抽出した個人グループ、法人グループ別の関連当事者表に追加記載していくことになります。

(個人グループ)

(法人グループ)

3-3.注記すべき重要性の判定

①重要性の判定基準

関連当事者会計基準に従うと、注記すべき関連当事者取引は下表のように要約できます。

(関連当事者注記の重要性の判定基準表)

関連当事者注記の重要性の判定基準表と照らし合わせながら、前回までに作成した前回集計した個人グループ、法人グループ別の表に注記の重要性の有無を書き加えていくこととなります。

(個人グループ)

(法人グループ)

4.関連当事者に関する開示

4-1.注記事項

関連当事者に関する開示に関しては、下記事項が注記されます。

・重要性のある関連当事者との取引(関連当事者会計基準10項)

  1. 関連当事者の概要

  2. 会社と関連当事者との関係

  3. 取引の内容。なお、形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載する。

  4. 取引の種類ごとの取引金額

  5. 取引条件及び取引条件の決定方針

  6. 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高

  7. 取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容

  8. 関連当事者に対する貸倒懸念債権及び破産更生債権等に係る情報(貸倒引当金繰入額、貸倒損失等)。

・親会社または重要な関連会社(関連当事者会計基準11項)

  1. 親会社の名称等(存在する場合)

  2. 重要な関連会社の名称及び当該関連会社の要約財務情報

4-2.注記例

 前回までに紹介した事例についての注記を取りまとめると下記のようになります。

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